正式な就職浪人 就職 活動

マクロ経済の伸び悩み・縮小は、所得配分の二極化を大きくし、階層化を通じた社会の亀裂をもたらす恐れがある。
なぜならば、マイナス成長の定着は経済規模全体が縮小していくことを意味するが、市場経済における企業は収益拡大が生き残の条件であるため、マイナス経済のもとでは収益を拡大していく「勝ち組」企業と収益を減らしていく「負け組」企業との二極化が生じることになりやすいからである。
その結果、勤める企業の業績によって働き手の所得も二極化せざるを得ない。
さらに、倒産企業が発生しやすくなることで、個人は失業リスクに晒されやすくもなる。
何よりもバブル崩壊以降における経済成長率の傾向的低下のもとで、企業間賃金格差が拡大したことや、倒産・失業が増えたことがそれを物語る。
加えて、低成長のもとでは新卒採用の抑制スタンスを続けざるを得ない。
確かに、ここにきて新卒作用が回復傾向にあるものの、序章でもふれた通り、それは過去の人員削減の反動によるところと、いわゆる団塊世代の大量退職を目前に控えていることへの対応という、「特需」的な性格が含まれている。
また、事業環境の複雑化を背景に、企業が新卒採用者に求める要件はハイレベルのものになっており、1部の「優秀な人材」は引手あまたであるが、正社員になれない若者も依然として多く存在する。
結局、一九九〇年代後半から二〇〇〇年代前半にかけての「最悪期」は脱したものの、若者の正社員・非正規社員への二極分化の傾向は構造化したとみるべきであろうそうしたなか、正社員・非正規社員の二重構造が続けば、正社員になれる層といわゆるフリーターにしかなれない層への分化が進み、その結果、職業能力・所得の面での社会の階層化が生じるリスクが高い。
とりわけ、近年フリーターのク中年化″が指摘されており、過去一〇年において正社員になれず十分な能力形成ができなかった世代が生まれており、これが新たな所得階層の固定化の温床となることが懸念されている。
この点に関し、「労働力調査」により、一九九〇年代以降に働きはじめた「出生コーホート(同じ時期に生まれた人々)」ごとに、男性の一時雇用者(臨時雇と日雇の合計)の数が年齢によりどう変化してきたかをみてみた。
まず、二五~二九歳時点での男性一時雇用者については、一九六〇年代前半生まれのコーホートの場合、一九九〇年時点が該当し、その数は一〇万人であった。
これに対し、六〇年代後半生まれの場合は一九九五年時点で二五~二九歳に該当し、一時雇用者数は二一万人に増加している。
同様に、七〇年代前半生まれ、七〇年代後半生まれの二五~二九歳時の一雇用者数は二四万人、二九万人へと大幅に増加している。
九〇年代に入って若年雇用環境が厳しさを増すに伴って、最近時点の世代ほど不安定雇用の割合が上昇していることが確認される。
出生コーホ卜別の各年齢時による一時雇用者数(男性)の推移ここで加齢に伴ってコーホートごとの一時雇用者数がどう推移するかに注目したい。
三〇~三四歳時には、二五~二九歳に比べて一時雇用者数がやや減少する傾向がある。
しかし、その後、三五~三九歳時、四〇~四四歳時と、一時雇用者数は横ばいから微増傾向で推移している(図表)。
これは、三〇代後半になっても安定的な職が得られない場合、その後も「中年フリーター」として不安定な雇用を余儀なくされる可能性が高いことを物語っている。
さらに、佐藤[二〇〇〇a]によれば、四〇歳時点での職業カテゴリーを親子で比較すると、一九一六~三五年生まれの「戦中派」の世代、そして、一九二六~一九四五年生まれの「昭和ヒトケタ前後」の世代までは、その父親の職業を比較したとき、管理職や専門職といった高給サラリーマン層では、親子間の継承の度合いが傾向的に低下していた。
しかし、一九三六~五五年生まれの「団塊の世代」では、親子間の継承の度合いが高まっているという。
つまり、「『団塊の世代』では、戦後生まれたホワイトカラーの開放性が失われ、戦前と同じぐらい『努力してもしかたない』社会になっている」(佐藤[二〇〇〇a])。
そして、こうした社会階層の再生産が意味するものは、「子供でいえば、それは学校でがんばることの無意味化であり、大人でいえば、一人一人の職場でがんばることの無意味化である。
たとえ自分はダメでも子供には期待をかける、そのために必苑に働くことが戦後日本の質の高い労働力を培ってきたわけだが、その基盤が消滅しつつある」(佐藤[二〇〇〇b])。
こうした「貧困の再生産」が繰り返されると、社会の階層化が生じる。
やや大袈裟にいえば、おそらく戦後日本社会の最大の特色であり、また最大の成果であったのは、「階層化されない社会」という理念が、人類史上初めてほぼそれに近い形で実現したことであろう。
先人が成し遂げたその「歴史的な偉業」が崩壊していくという危機の瀬戸際に、日本社会はいま立っているのである。
問われる「公平原理」の転換しかし、戦後日本社会は「階層化されない社会」のモデルとして世界に誇るべき社会であったがゆえに、今後再びその社会の「復元」を目指すべきだ、というのは目指すべき方向性ではない。
なぜならば、これまで述べてきた通、あらゆるシステムとは環境に適応するためのものであり、環境が変化した以上、新しい環境に応じた新しいシステムを構築し直すことが必要であるからである。
この点に関し、本書でこれまで述べた新しい社会の具体例は、欧米社会の合理性を多く紹介してきたため、「それは欧米社会の特徴である階層化社会を受け入れることと表裏l体であり、ク階層化されない社会″の建設を目指すべきだというのは論理矛盾、あるいはお題目に過ぎないのではないか」との批判が考えられる。
ここで重要なのは「公平概念」の軸の転換ということである。
戦後日本社会では、「年齢内平等」が公平概念の軸であり、それは「人生コース・家族モデルの単一化」を前提としていた。
つまり、男性は学校を卒業して企業に入り、定年まで同じ会社で勤め上げる。
一方、女性は学校卒業後、数年問会社勤めか花嫁修業をして結婚し、専業主婦として子育てと家事を担うという、単一の人生コースへの収れんがみられた。
皆が同じようなライフコースを進むため、年齢内の平等を保てば、人生全体でみれば骨が同じような所得・同じような社会的地位を得ることができたわけである。
高度成長期から一九七〇年代頃まで、日本社会ではそうした人生コースの単一モデルへの収れんが生じたが、八〇年代以降は再び人生コースのバラツキが広がりはじめる。
とりわけ、女性の社会進出が進み、男女間の分業を前提とした、これまでの「平等概念」に揺らぎが生じる。
さらには、若者世代で正社員になれた層となれなかった層で二極化が生まれており、「年齢内平等」はいまや架空のものになりつつある。
同じ年齢でも、正社員であるか非正規社員であるかによって、所得や社会的な地位があまりにも違いすぎるからである。
こうした社会環境の変化を前提にすれば、今後の「公平概念」は年齢・性別といった〝属性ベース″を軸としたものから、職業能力をはじめ、NPO活動のための能力等も含めた、様々な社会的活動を遂行する際の能力というク機能ベース″を軸としたものへと転換する必要があろう。
端的にいえば、「同一価値労働・同一貸金」原則、あるいはより広、「同一価値機能・同一処遇」原則といってよい(ここで「処遇」とは、賃金等金銭的報酬のみならず、組織における地位や栄誉も含めている)。

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